黄華堂☆星空ブログ

黄華堂の活動や、星空情報、宇宙・天文に関するNEWS観望会で使える小ネタ等を紹介していきます。
<< December 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
宇宙開発裏話 Vol.20 〜もう一つの冥王星探査〜続き
0
    このコーナーでは、宇宙開発(ロケットや人工衛星)に関する裏話を紹介していきます。
    前回の「もう一つの冥王星探査」の続きです。

    ボイジャー1号による幻の冥王星探査と、
    今回のニューホライゾンズではどのような違いがあるのでしょう?


    大きなパラボラアンテナを有する1号は、
    華奢なニューホライゾンズに比べて10倍の通信速度がありました。
    また、1号はスキャンプラットホームと呼ばれる、
    観測機器を四方に動かせる台を持っていたため、
    機器が固定されている今回の探査より自由に写真を撮ることができました。


    そもそも今回の接近時には、冥王星の高緯度地域にしか太陽光があたっていないため、
    赤道方向から光が差し込んでいた1号のときと比べると限定的な領域しか撮影できません。
    1号にはニューホライゾンズが搭載していない、磁力計やプラズマの観測装置も詰まれていました。



    技術的な進化がもたらした、ニューホライゾンズの利点もあります。
    1号のメモリはわずか67MBのデジタルテープレコーダーでしたが、
    今回は8GBのフラッシュメモリを搭載しています。
    細い通信環境を補完できるでしょう。

    各種カメラの性能は比較にならないほど向上し、
    例えば紫外分光計は1号の2画素から3万画素へ向上しています。

    また、1号では非搭載だった、
    大気圧や温度、ダスト環境を詳しく調べる機器が搭載されています。



    もしボイジャー1号が冥王星を探査していた場合、宇宙探査はどう変わっていたのでしょう?
    私たちは30年前に冥王星の姿を知ることができた代わりに、タイタンは謎のままでした。
    きっとホイヘンスによる着陸探査も行われていないでしょう。

    また、あの有名な太陽系のファミリーポートレイトも撮れていません。


    ボイジャー1号が1990年2月に撮影した太陽系のファミリーポートレート。地球上のすべての営みがたった一つの青い点に収まっている。

    1号はタイタンに立ち寄るために黄道面を大きく逸脱する軌道をとったおかげで、
    太陽系を大きく俯瞰できる写真を取得できたのです。
    私たちの太陽系観は、かなり違っていたものになっていたのかもしれませんね。


    by Fujii
    宇宙開発裏話 | permalink | comments(0) | - |
    宇宙開発裏話 Vol.20 〜もう一つの冥王星探査〜
    0
      このコーナーでは、宇宙開発(ロケットや人工衛星)に関する裏話を紹介していきます。


      今年7月、NASAの探査機「ニューホライゾンズ」が冥王星を探査します。

      先日1月15日、準備段階「AP1」に突入し、冥王星到着に備え始めました。
      到着とはいっても、冥王星の横を通過してすぐにバイバイするフライバイ探査で、詳しく探査できるのはほんの数日です。ニューホライゾンズの重量はわずか500kgほどに抑えられており、2006年にアトラスVロケットの一番大きなタイプで打ち上げられました。打ち上げ時の速度は人類史上最も速い、なんと16.5km毎秒!その速度でも9年もかかるほど、冥王星は遠いのです。


      冥王星やその衛星の観測を終えた後は、太陽系の外縁天体にいくつか接近し、先輩のボイジャーを追い越します。今回はかつてボイジャーで行われるはずだった、幻の冥王星探査についてお話しましょう。


      1973年に構想された、ボイジャーの元となったグランドツアーミッションにおける軌道計画(左)と実際のボイジャー1号、2号の軌道(右)の比較。(NASA/JPL, 1973)


      ボイジャー1号と2号は、175年周期で訪れる、外惑星の連続的な探査が可能な軌道「惑星グランドツアー」を利用して外惑星の素顔を明らかにしました。
      先に打ち上げた2号が木・土・天・海を探査したのに対し、
      16日遅れて打ち上げ、あとから追い越した1号は木・土のみでした。


      実はこの1号に冥王星を探査するプランがあったのです。
      1号の冥王星探査は、土星スイングバイから6年後の1986年春に行われる予定でした。しかしこの軌道の場合、土星の衛星タイタンに近づけません。後に続く2号も、タイタンから遠いところを通過する予定でした。

      タイタンか、冥王星か?

      大激論の末、NASAは冥王星よりもリスクが少なく、得られる科学的知見が多いと思われるタイタンを選びました。当時はまだ、カロン含む5つの衛星が見つかっておらず、カイパーベルト天体についても知られていなかったのです。

      続く

      by Fujii
      宇宙開発裏話 | permalink | comments(0) | - |
      宇宙開発裏話 Vol.19 〜日本海軍の固体ロケット〜
      0
        このコーナーでは、宇宙開発(ロケットや人工衛星)に関する裏話を紹介していきます。

        戦前のロケット開発の中心が、平塚の海軍火薬廠(かやくしょう:兵器の工場のこと)にあったことはあまり知られていません。太平洋戦争が終結する昭和20年までの36年間、火薬廠は海軍の火砲発射薬やロケット用推進薬の開発・生産拠点となり、ダブルベース推進薬を用いたロケットモータも作られました。
        モータ成形の要となる圧出機を設計したのが、火薬廠の研究部に勤めていた村田勉です。村田は、糸川教授の呼びかけによって戦後のロケット開発にも参画し、ペンシルロケットからはじまる日本の宇宙開発を支えました。今回は戦前の固体ロケットについて取り上げましょう。


        糸川英夫

        昭和6年頃から、海軍火薬廠では火薬燃焼の幾何学的関係が調べられ、昭和8年には黒色火薬の推力を計測する初めてのロケット実験が実施されました。

        昭和11年からは「火薬の申し子」と呼ばれた村田勉が責任者となり、黒色火薬からダブルベース火薬へ切り替わりました。
        当時主流だった内面、外面から同時に燃焼する管状火薬に限らず、様々な形状の火薬が試され、固体ロケットの基本的なパラメータについて明らかにしたのです。内側から燃える「内面燃焼」や、端から燃える「端面燃焼」といった、現代のロケット工学でも用いられるこれらの燃焼形式は、村田によって命名されました。
        しかし、宇宙ロケットに応用するアイデアはなく、大砲に変わるロケット兵器の開発が目的でした。

        昭和12年、村田は大きな60kgの爆弾をロケットへ改良するように命じられました。
        このロケットは、燃焼実験中に爆発事故を起こしてしまいます。当時、ロケット推進薬は爆発成分と安定化剤などを混ぜて脱水後、加熱して可塑化(ゲル化)されていました。可塑化後は圧出成形機で圧力が加えられ、型枠に沿って所望の形状に成形されました。ただし、圧出機には少量の火薬しかに装填できなかったため、大型の火薬は熱延した火薬を積み重ねて成形する、別の製造方法が採用されました。
        爆発原因は、火薬の圧着が不十分であったため、火炎が隙間に入り込み、燃焼面積が急増したためでした。大きなロケット推進薬を作るには、大量の火薬を圧出できる新しい機械が必要でした。

        昭和13年、村田は製造部に移り、大型成形薬の研究に着手しました。
        火薬成形について徹底的な実験を行い、圧出機の筒の断面積と型枠の穴の断面積との比が、火薬の密度と関係していることを突き止めたのです。また、この比がある値以上でなければ火薬に気泡が残ってしまうことも力学的に解明しました。
        これらの結果をもとに、村田は圧出成形機の設計を大幅に変更し、装填量を2.5倍および5倍とした大型圧出機を新規開発しました。大型の圧出機では噴進弾(ロケット弾)が生産され、戦況が悪化した昭和19年には有人ロケット特攻機 「桜花」も作られました。


        ロケット特攻機「桜花」

        by FUJII
        宇宙開発裏話 | permalink | comments(0) | - |
        宇宙開発裏話 Vol.19 〜日本海軍の固体ロケット〜続き
        0
          このコーナーでは、宇宙開発(ロケットや人工衛星)に関する裏話を紹介していきます。
          前回に引き続き、固体ロケットのお話です。

          戦後、村田は愛知県武豊の日本油脂株式会社に移り、火薬の研究を続けました。ロケット研究を再開したのは、昭和29年のことです。糸川研究室のロケットを担当していた、富士精密工業の戸田康明との出会いがきっかけでした。

          戸田は村田と面会し、ロケット開発の協力を打診します。ロケット技術を再び生かしたいとかねてから考えていた村田は、喜んで承諾しました。ただし、大きなダブルベース推進薬を作るためには、壊れていた圧出機を修理しなければなりません。村田は、手元にある火薬と小型の圧出機を使って、小さな管状推進薬を200本作りました。朝鮮戦争で使われていた米軍のバズーカ砲用火薬をロケット実験用に最適化したものでした。糸川教授は、小さい方が経費を抑えて何度も実験できる、と逆転の発想を抱き、この管状火薬に合わせたロケットを作りました。これが戦後の日本で最初のロケットとなった、ペンシルロケットです。



           その後、戦前に重噴進弾や桜花の推進薬を製作していた大型の成形機が修理され、これらはペンシルに続く、ベビーからカッパ4型までのロケットの推進薬を作りました。兵器として開発された負の技術が、宇宙を目指す黎明期の日本のロケット開発を支えていたのです。村田と戸田の出会いがなければ、海軍火薬廠のロケット技術が受け継がれることなく、全くの白紙の状態から開発せざるを得ませんでした。自前の固体ロケットを原動力に発展した日本の宇宙科学研究は、大きく出遅れていたに違いありません。


          by FUJII
          宇宙開発裏話 | permalink | comments(0) | - |
          宇宙開発裏話 Vol.18 〜「アイス」の復活なるか〜
          0
            このコーナーでは、宇宙開発(ロケットや人工衛星)に関する裏話を紹介していきます。

            1986年のハレー彗星の回帰にあわせ、各国から探査機が打ち上げられました。日本の「さきがけ」「すいせい」、ヨーロッパの「ジオット」、ソ連の2機の「ヴェガ」、そしてアメリカの「アイス」が冷戦時代のまっただ中に連携して観測を行い、世界中が太陽系をさまよう小さな氷の旅人を追いかけたのです。


            ※ハレー彗星(Wiki)


            もともと最初に共同観測を提案したアメリカは、ハレー彗星に大型の探査機を送る予定でした。ボイジャーで培った技術を流用した「HIM」や、「HRM」というサンプルリターンミッションです。しかし当時のNASAはシャトルで手一杯で、十分な予算を確保できませんでした。この状況を救ったのが、「軌道の帝王」と呼ばれるNASAのロバート・ファーカー氏です。軌道設計の技術者である彼は、地球磁気圏を探査している「ISEE-3」をわずかなエネルギーで彗星へ送る道を見つけました。ISEE-3は1978年に打ち上げられ、史上初めてラグランジュ点を周回するハロー軌道に投入されていました。そこから太陽の重力や月スイングバイを利用し、天井からスパゲッティを落としたような複雑な軌道を潜り抜け、ハレー彗星へ到達するのです。途中、りゅう座流星群の母天体であるジャコビニ彗星に寄り道もする、二度おいしい軌道でした。軌道変更後には新しい「アイス」の名前が付けられ、ハレー艦隊の一員として彗星のプラズマテイルを観測しました。97年にはシャットダウンの信号が送られ、永い眠りにつきました。


            ※ISEE-3/ICEの軌道変更(Wiki)


            2008年、NASAがアイスの動作を確認すると、13の観測機器のうち12個が正常に動作していることがわかりました。秒速150mの速度を変更できる、推進剤も残されたままでした。かすかな電波はアマチュアにも捉えられ、今年の8月には再び地球に戻ってきます。噴射と月スイングバイができれば、再びアイスをハロー軌道へ迎え入れることができるでしょう。

            しかし、アイスとの通信に必要な地上機器は、老朽化のためすでに撤去済みです。私たち人類は、もはやアイスへ問いかけることすらできません。肝心のNASAも、新しくシステムを用意する余裕がありません。

            そこで立ち上がったのが、最近流行のクラウドファンディングです。民間とNASAが運用再開のための資金集めをはじめています。参加企業は、歴史に埋もれたルナ・オービターミッションの探査成果を、クラウドファンディングでよみがえらせた実績があります。期日は5月18日。10ドルで公式ページに名前が載るそうです。みんなの力でぜひ復帰させたいですね。

            ・ISEE-3 Reboot Project
            http://www.rockethub.com/42228


            by FUJII


            バックナンバーはこちらをどうぞ!!
            黄華堂ホームページ

            宇宙開発裏話 | permalink | comments(0) | - |
             1