黄華堂☆星空ブログ

黄華堂の活動や、星空情報、宇宙・天文に関するNEWS観望会で使える小ネタ等を紹介していきます。
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あなたの知らない宇宙 Vol.59 〜宇宙塵〜
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    宇宙のことを知る方法は、望遠鏡を使った観測や、宇宙船で他の惑星や小惑星まで行くだけだと思っていませんか?実は、宇宙から降ってくる塵(宇宙塵:うちゅうじん)を調べることでも、宇宙の重要な情報を得ることができます。今回は『宇宙塵』の話を紹介します。


    宇宙から降ってくる物と言われると、多くの人は隕石を想像するかもしれません。最近では、2013年にロシアへ落ちたチェリャビンスク隕石が有名です。隕石の大半は、火星と木星の間にある小惑星や、それらがぶつかってできた破片が地球に落ちてきたものです。そのため、隕石を調べると元の小惑星の情報を知ることができます。しかし、隕石はそう頻繁に落ちてくるわけではありませんし、落ちた隕石を回収できないこともあります。



    宇宙から地球に降ってくるのは隕石だけでなく、隕石より小さい数ミクロンメートル程度の宇宙塵と呼ばれるものも降ってきています。降ってくる宇宙塵の年間総質量は4万トンにも達しますが、大半がその小ささのために地面にたどり着く前に燃え尽きてしまいます。しかし、年間2500トンは燃え尽きずに地表に達し、その量は年間に降ってくる隕石総質量の50倍にもなります。宇宙塵は地球の至るところに降り、その多くは地球の土と混ざってしまい区別することができません。ではどうやって宇宙塵を集めれば良いのでしょう。例外として、南極などの氷の上や、深海の海底に降り積もった宇宙塵は地球物質と区別することができます。さらに、飛行機を使って空から降ってきている途中の宇宙塵を捕まえることも行われています。


    そこまで大変な思いをして、宇宙塵を集めることに意味があるのでしょうか。実は、宇宙塵の中には太陽ができた頃に作られた物質や、太陽ができる前に作られた物質が混ざっていることが分かっています。そのような宇宙塵を調べると、太陽がどんな場所でできたのか、太陽ができた頃の銀河はどんな環境だったのかといったことまで知ることができてしまうのです。そのため、研究者は一生懸命に宇宙塵を集め、宇宙の謎を解き明かそうとしています。まさに、『塵も積もれば山となる』ですね。


    参考文献
    【1】ELEMENTS June 2016 (Vol 12, Number 3)

    By Ono

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    あなたの知らない宇宙 Vol.58 〜バリアフリー天文学〜
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      みなさん、「バリアフリー天文学」という言葉をご存じでしょうか。「バリアフリー」という言葉を聞いたことがある方なら多いかと思います。天文学とは、星を見たりするように、一般には見ることが前提である学問だといえます。

      それでは、例えば目の見えない人はどのようにして天文学を学ぶのでしょうか。見えないという“障壁(バリア)”を、点図や点字、立体模型などで触って学ぶことによって、“障壁を取り除く(バリアフリー)“ことができますね。このように、従来の天文教育普及活動で忘れられがちな障がい者(視覚、聴覚,知的・・・)やこどもたちなどあらゆる人を対象とした天文教育を「バリアフリー天文学、ユニバーサルデザイン天文教育」と呼びます。ここで重要なのは、この活動は「特殊な立場」にある人々への「特別な活動」ではない、ということです。では実際にどんな活動がおこなわれているのか、具体的に紹介したいと思います。

      星を見る場所といえば、天文台がありますが、天文台の設備にもバリアフリーが取り入れられています。例えば、国立天文台では、望遠鏡を車いすのまま観望できたり、紹介パンフレットを点字で作成しています【1】。また、科学館ではプラネタリウムで星について学ぶことができますが、山梨県立科学館では、全編手話付きで、みんなで手をつかって星を測ったりするプログラムが過去に行われました【2】。福音館書店の科学雑誌「大きなポケット」2011年2月号に掲載の高橋淳・坂井治・嶺重慎著の原稿【3】をもとにした小学生向け科学絵本の開発では、活字版(活字を用いた紙印刷の本)・点字版(点字と点図で構成する本:図2)・音声版(音声を録音したCD)の3つの異なる形式で提供されています【4】。これからさらにバリアフリーが取り入れられ、天文教育があらゆる人々に普及していくことを願いたいものですね。




      参考文献/参考HP
      【1】国立天文台 [http://www.nao.ac.jp/astro/sky/2016/11.html]
      【2】山梨県立科学館 [http://www.kagakukan.pref.yamanashi.jp]
      【3】月刊版『大きなポケット』 福音館書店、2011年2月号
      【4】バリアフリー天文科学絵本の開発・刊行 [http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/static/ja/news_data/h/h1/news6/2012/120425_1.htm]



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      あなたの知らない宇宙 Vol.57 ~ブレーザー~
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        みなさん、相対性理論をご存知でしょうか?なんか難しそう、聞いただけで拒否反応が...、という方もいらっしゃるかもしれません。今回は相対性理論のうち、特殊相対性理論の効果がみられる現象を"簡単に"ご紹介します。

        まず、夜に正面から車が走ってくることを考えます。普通は車が止まっていても走っていてもヘッドライトの明るさは変わりませんね。ところが車が光の99%の速度で走れたとしたら、ヘッドライトの明るさが変わるのです。どれほどかというと、10億倍も明るくなります。これを『相対論的ビーミング効果』と呼びます。この時のヘッドライトの明るさは昼間の太陽よりもずっと明るいのです。こんな車が正面から走ってきたら、失明してしまいますね。普通に走る車のヘッドライトはどうして明るさが変わらないかというと、時速60キロメートルは光速の0.00001%にも満たないため、相対性理論の効果が出ないのです。

        日常生活では相対性理論の効果を感じることはありませんが、宇宙に目を向けるとその効果が現れます。例えば、宇宙には『超巨大ブラックホール』という太陽の100万倍以上もの質量を持つ天体があります。その一部は周りに明るく輝くガス円盤を持ち、細く絞られた『ジェット』と呼ばれるプラズマを噴出しています。


        (credit: NASA/JPL-Caltech)

        このジェットは光の99%を超える速さで運動することがあります。すると、相対論的ビーミング効果が効き、非常に明るく観測されるのです。ジェットが地球の方向にまっすぐ噴出していて、相対論的ビーミング効果が観測できる天体を『ブレーザー』と呼びます。ブレーザーはジェットからのエネルギー放射が観測しやすいため、どのように光速に近い速度まで加速されるのか、といった問題を解決するための重要な研究対象となっています。

        by Tasaki



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        あなたの知らない宇宙 Vol.56 〜遠方クエーサー〜
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          これまでの記事でも述べられてきたように、多くの銀河の中心には超大質量ブラックホールがあることが知られています (第17回銀河中心に潜む天体 〜超大質量ブラックホール〜第48回ブラックホールの質量を測るなど)。

          ブラックホールは非常に質量の大きな天体ですが、その大きさは非常に小さく、銀河の大きさに比べるとたったの100億分の1程度にすぎません。10桁にも及ぶ空間スケールの違いがある銀河とブラックホールですが、これまでの研究から、銀河とブラックホールの進化は密接に関わっている可能性があることが知られています (共進化)。ブラックホールと銀河バルジの星質量との関係を調べてみると、質量の大きい銀河ほど質量の大きいブラックホールを持つためです。
          この関係はマゴリアン関係【1】として知られています。

          さて、ほとんどの銀河の中心に超大質量ブラックホールがある、ということですが、もちろん、ブラックホールを直接観測できるわけではありません。ブラックホールが存在することの観測的な証拠のひとつに、非常にコンパクトな領域から莫大なエネルギーが放射されているというものがあります。このような天体の例にはクェーサーがあります。クェーサーの発見当初は、非常に特異な「星」と認識されていましたが、研究が進むにつれてその天体は、非常に遠くにあるのに明るく見える、つまりとてつもなく明るい天体であること、それにもかかわらず、その大きさは非常に小さいということがわかりました。空間スケールが非常に小さいにも関わらず、莫大なエネルギーを生み出せる…そのような天体はブラックホールしかない、というわけです。

          現在では、スローン・デジタル・スカイサーベイ (SDSS; Sloan digital Sky Survey) などの大規模な探査観測により、多くのクェーサーがあることが知られています。SDSSによる最新のクェーサーカタログには、約30万個のクェーサーが掲載されています【2】。
          遠方のクェーサーも見つかってきており、初期宇宙から現在に至るまで、クェーサーがどのように進化してきたかも調べられつつあります (光速が有限なので、遠方を見ることは過去を見ることに相当します)。過去から現在に至るまでのクェーサーの明るさごとの個数を調べてみると、明るいクェーサーほど個数のピークが過去にあることがわかってきました(【3】,【4】,【5】など)。これは、クェーサーの活動性が過去から現在に向かって弱まっていることを示し、活動銀河核のダウンサイジングと呼ばれています。
          しかしながら、クェーサーが非常に遠方にある場合、暗いクェーサーは見えていない可能性があります。そのため、クェーサーの進化、ひいては銀河とブラックホールの共進化について完全に理解するためには、遠方にある暗いクェーサーの観測が重要です。

          これまでにも遠方クェーサーは発見されていますが、その数は少なく、統計的に議論するには不十分です。この状況を打開するのが、これまでの記事 (第38回銀河の進化とガスの役割(http://www.oukado.org/shiranai/038.html)など) でも紹介されている、すばる望遠鏡のハイパー・シュプリームカム (HSC; Hyper Suprime-Cam) です。現在は「すばる戦略枠」として HSC による大規模な探査観測が行われている真っ最中です。HSC の高い感度で非常に暗い天体も観測可能になり、広い範囲を観測するため、多くの天体を見つけることができます。2015年から始まった観測により、すでに遠方クェーサーが発見されつつあり【6】、これからの観測により、さらに多くのクェーサーが見つかることが期待されています。

          参考文献/参考HP
          【1】Marconi & Hunt, 2003, ApJ, 589, L21
          【2】Paris et al, in preparation
          【3】Croom et al., 2009, MNRAS, 399, 1755
          【4】Ikeda et al., 2011, ApJ, 728, L25
          【5】Ikeda et al., 2012, ApJ, 756, 160
          【6】Matsuoka et al. 2016, arXiv:1603.02281

          by Ogura



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          あなたの知らない宇宙 〜星が一生の最期に輝く瞬間、ショックブレイクアウトを捉える!〜
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            太陽の8倍以上の質量を持つ星や、2つの星がお互いの周りを公転している連星の一部はその一生の最期に“超新星爆発”と呼ばれる大爆発を引き起こします。第3回「超新星と私たちのカラダ」でも紹介したように、宇宙に存在する重元素の多くは超新星爆発の際に作られます。そのため、宇宙の進化を探る上で重要な天体として、世界中の多くのグループによって超新星の観測が行われています。しかし、超新星爆発は非常に重要な天体現象にも拘わらず、それを引き起こすメカニズムや、爆発直前の星の様子については未だによくわかっていません。

            今回は超新星の研究の中でも“ショックブレイクアウト”という現象についてお話したいと思います。2014年にNHKで放送された“木曽オリオン”というドラマで取り上げられていたので、聞いたことがある!という方もいらっしゃるかもしれません。


            超新星爆発の際、星の内部で発生した衝撃波が星の外側に向かって伝わっていきます。この衝撃波が星表面に達した瞬間、非常に明るく輝きます。この現象をショックブレイクアウトと呼んでいます。爆発した星はその星の情報を多く持っています。通常の観測では爆発した星の大きさ(半径)を推定するのは困難ですが、ショックブレイクアウトを観測することによって、星の大きさを正確に求めることができます。

            それなら、ショックブレイアウトの観測をたくさんすればいいのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれません。がしかし、これがなかなか難しい観測なのです。このショックブレイクアウトという現象はわずか数時間しか見られません。しかも広い宇宙のどこで超新星が起こるかわからないため、超新星自体探すのも大変です。そのため、超新星探しをしているグループは出来るだけ夜空の広い範囲に渡って探す、かつ、超新星が現れていないか短い時間間隔で確認する…という大変な探索を行っています。このため、可視光でショックブレイクアウトの観測はなかなか捉えることができていませんでした。


            しかし、2016年3月にアメリカのPeter Garnavichさんたちの国際研究チームが可視光でショックブレイクアウトを捉えたとの報告がありました。NASAの人工衛星“ケプラー”が30分おきに観測しているデータ3年分を調査してやっと捉えられたのです。なんと約50兆個もの星を解析したそうで、ショックブレイクアウトを捉えることがいかに難しいか物語っています。

            今後も、大規模な超新星探索が計画されており、より多くのショックブレイクアウトが捉えられることが期待されます。


            参考文献/参考HP
            【1】木曽KWFC超新星探査プロジェクトKISS プレスリリース
            http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/NEWS/pr20120627.html
            【2】AstroArts “初めてとらえられたショックブレイクアウト”
            http://www.astroarts.co.jp/news/2016/03/29shockbreakout/index-j.shtml

            by Kawabata


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            あなたの知らない宇宙 〜ついに検出、重力波!〜
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              「重力波を直接検出!」2016年02月12日(日本時間)、衝撃的なニュースが全世界を流れました。筆者は、たまたま乗船していたとき船上ニュースに触れ、興奮のあまり思わず「おぉぉ〜」と唸ってしまったことを記憶しています。本稿では、重力波の検出の衝撃が少しでも伝わればと思います!


              そもそも重力波とは何なのでしょうか?一言で表現するとすれば「時空の歪みが伝わる波」と言えます。例えば、お風呂に張ったお湯に水滴が落ちた時に生じる波紋を考えると、水滴によって発生した揺らぎが、水面上の上下振動として、水面を伝わる現象と言えます。同様に考えると、重力波は、非常に強い重力源によって発生した揺らぎが、時空の歪みとして、時空を伝わる現象と言えます。重力波の発生源となりうる非常に強い重力源としては、中性子星やブラックホール等の合体が候補として挙げられてきましたが、つい最近まで重力波による時空の歪みの時間変動を捕えることはできていませんでした。


              ところが、2015年09月14日(日本時間)、そのとき歴史が動きました。何と米国の LIGO **1 と欧州の VIRGO **2 という2つの重力波望遠鏡で同時に、時空の歪みの時間変動を捕えたのです。この時間変動のパターンを解析したところ、太陽質量の約30倍という大質量のブラックホール連星系の合体によって生じた重力波であることまで分かってしまいました。【 LIGO の重力波検出



              さて、いよいよ重力波の直接検出が物理学・天文学に与えたインパクトについて語り尽くしたいと思います。重力波の検出という1つの観測結果で、思いつくだけでノーベル賞級の衝撃が、何と4つもあります☆



              (1)「4つの力」の1つである重力を伝搬する波動を発見したことの衝撃!
              現代物理学において、自然界には「電磁気力」「弱い力」「強い力」「重力」の4種類の力しかないと考えられています。重力を伝搬する波動である重力波が初めて見つかったことは、現代物理学にとって非常に重要な発見です。電磁気力を伝搬する波動である電磁波(光)を発見したのに相当するインパクトがあります。


              (2)時空の歪みが伝わることを実証したことの衝撃!
              アインシュタインの一般相対論は非常に洗練された理論ですが、数学的な美しさから導かれた要素が強く、実証されていない部分が非常に多く残っているという側面もあります。時空の歪みが伝わる現象である重力波はアインシュタインの予言であり、重力波の検出により、唯一の重力理論である一般相対論が机上の空論から完全に脱却したと言えると思います。


              (3)ブラックホール合体の現場を直接検出したことの衝撃!
              今まで人類はブラックホールを直接観測する手段を持っていませんでした。というのもブラックホールは非常に重力が強く、光も抜け出すことができないため、光による直接観測は原理的に不可能であるからです。重力波の検出により、人類はブラックホールの謎に直接迫る権利を初めて得られたのです。


              (4)重力波からブラックホール質量まで決定できたことの衝撃!
              観測された重力波の時間変化パターンを一般相対論に基づいたブラックホール連星系の合体の理論モデルと比較することで、ブラックホールの質量まで決定できてしまいました。恒星の色から質量を求めるように、重力波からブラックホールの物理状態を明らかにするプロセスは天文学そのもので、重力波を用いた天文学が夜明けを迎えたと言っても過言ではないと思います。




              1915年の一般相対論の発表から100年後、重力波の直接検出により、人類の宇宙への理解は次のステージに到達したと言えると思われます。「2015年」は、重力波天文学の幕開けという歴史的な年として、後世にまで語り継がれるでしょう。



              << **1 >> LIGO (Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory):
              米国のレーザー干渉型重力波望遠鏡。1辺が4kmのL字型をした巨大なレーザー干渉計。2台の望遠鏡から構成され、1台はルイジアナ州リヴィングストン、もう1台は3000km以上離れたワシントン州ハンドフォードにある。レーザーの干渉パターンにより 10^-19 % 以下という僅かな空間の伸縮を検出することができる。【 LIGO の仕組み

              << **2 >> VIRGO:
              欧州のレーザー干渉型重力波望遠鏡。1辺が3kmのL字型をした巨大なレーザー干渉計。ピサの斜塔で有名なピサ近くのカーシーナにある。

              <参考文献>
              LIGO Web Page
              VIRGO Web Page
              重力波直接検出について(国立天文台)

              by Sumiyoshi

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              あなたの知らない宇宙 〜古代の日本人が見た宇宙(そら)〜
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                みなさんは「天文学」と聞いて何を思い浮かべますか?
星座?惑星?それともビッグバン?
断片的なモノであっても、現代の私たちは、誰でも少しは天文に関わる知識を持っています。
では、古代の日本人はどうだったのでしょう。


                日本人は昔から、「月」には大いに興味関心を持っていたようで、和歌などによく詠み込んでいます。しかし、「星」となると、七夕伝説になぞらえた、織女(織姫)と牽牛(彦星)の悲恋ものがほとんどとなってしまいます。
恋の和歌は死ぬほどたくさんあるのですが、単に星の美しさを詠む歌はあまり多くありません。
古代の日本では、和歌をはじめとする文芸作品には星に関するトピックが少なく、陰陽師など天文学の専門家以外の人々の関心は薄かったようです。


                
古代には光害がありませんから、たくさんの星々が見えたはず。
それなのになぜ関心が薄いのでしょう。
例えば現代でも、「実家からは天の川なんて毎日見えるよ!」「だけど意識しなくても毎日見えているものなので星座とか星の名前とかあまり興味ない」と言う人がいます。
(筆者の周りにも何人かいます。うらやましい限りです。)
それと近いものがある、と言っては星のよく見える所にお住まいの方に叱られてしまうかもしれませんが、毎日当たり前に見えるものなので関心が薄い場合もありますよね。


                
それでも時には星の美しさに心動かされる人もいるようで、次のような鎌倉時代の和歌があります。

                月をこそながめなれしか星の夜のふかきあはれをこよひしりぬる

                (月ならば眺め馴れていたけれど、星の美しい夜がこんなに心動かされるものだとは今夜初めて知りました)


                これは、玉葉和歌集(巻十五 雑歌二)に収められた建礼門院右京大夫(けんれいもんいんうきょうのだいぶ)という女性の和歌です。

                詞書(ことばがき、和歌が詠まれた場面や経緯の説明文)には、
                やみなる夜、星の光ことにあざやかにて、
                はれたる空は花の色なるが、こよひ見そめたる心ちしていとおもしろくおぼえければ
                (暗い夜に星の光がとりわけ美しく、晴れた空の薄い藍色であるのが、初めて見た景色のように思えてとても趣深かったので)

                とあります。


                古代の日本では、天文学がすでに中国から伝わっていたものの、暦の作成や吉凶の占いに使用することが多く、空に輝く星への知識としては人々になじみ深いものではなかったようです。
                しかし、夜空を見上げていなかったはずはありません。
                晴れていればいつでも満天の星空が見えていて、古代の日本人たちはそれをいつも身近に感じていたのではないでしょうか。
                そして、彼らは天文知識として個々の星座や星に意味を求めることより、たくさんの星が散らばっている星空全体を、ひとつのモノとしてとらえていたのかもしれません。

                <参考文献>
                鈴木健一編『天空の文学史 太陽・月・星』、三弥井書店、平成26年
                久保田淳校注『建礼門院右京大夫集 とはずがたり』、新編日本古典文学全集47、小学館、1991年
                井上宗雄校注『中世和歌集』、新編日本古典文学全集49、小学館、2000年

                by Senoo


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                あなたの知らない宇宙 〜太陽系第9惑星〜
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                  このコーナーでは「あなたの知らない宇宙」と題して天文学の少し専門的な知識を噛み砕いて紹介していきます。
                  バックナンバーについてはこちらをどうぞ!!

                  「最近話題の『太陽系第9惑星』って?」

                  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

                  2016年に入って、『太陽系第9惑星が存在する可能性がある』という報告が、カリフォルニア工科大学のKonstantin Batygin氏とMike Brown氏によってなされました。

                  いくつかのニュースは『太陽系第9惑星が見つかった』と報じていますが、あくまで可能性があるだけなのです。というのも、今回存在が予知された惑星は地球から非常に遠く、直接観測するのは現状困難です。そうなると、何故『可能性がある』と言えるのか不思議に思いますよね?今回は、どのようにして太陽系第9惑星の存在が予測されたのかをお話したいと思います。


                  現在では複数の太陽系外縁天体が見つかっていますが、そのうち比較的大きい6つの天体に彼らは着目しています。この6つの天体は離心率が大きい太陽を一つの焦点とする楕円軌道をしていますが、太陽に最も近づく近日点に至るのがほぼ同時であることが分かっています。もし、6つの天体が全くの偶然で同時に近日点に至る確率は0.007%と非常に小さく、何か理由があるだろうと考えたわけです。

                  そこ で、6天体と同じ軌道面上に、6天体が近日点に来るとき遠日点に至るような質量が地球の10倍以上の新しい惑星が存在すれば上手く説明できることが分かりました。新惑星の軌道長半径は約700 AUで高離心率、高軌道傾斜角と推測されています。これが、今回存在を予測された既存の太陽系惑星と比べると異質な太陽系第9惑星です。



                  そもそも、太陽系第9惑星と言えば2006年以前までは冥王星でした。冥王星は1930年にアメリカの天文学者Clyde William Tombaughによって発見され ました。

                  質量は地球0.1%と小さいにも関わらず、当時は39.5 AUという大きい軌道長半径を持つ天体が他に見つかっていなかったため、冥王星は外惑星の一つとして扱われていました。しかし、1992年から冥王星以外 の太陽系外縁天体が続々と発見され始め、2003年にMike Brown氏らのグループが冥王星より少し大きい太陽系外縁天体であるエリスを発見 したことを機に、冥王星は2006年の国際天文学連合総会で準惑星に分類されるようになったのです。冥王星から惑星の称号を剥奪するきっかけとなったMike Brown氏 が今回新たな惑星の存在を示唆するというのは運命的なものを感じざるを得ません。


                  今後、さらなる詳細な観測によって本当に太陽系第9惑星が存在するのか確かめられることが期待されます。また、このような惑星が存在するのであれば、太陽系の形成史を調べるよい手がかりになるかもしれませんをつけられるかもしれません。今後の研究の発展が楽しみですね。

                  <参考文献>
                  Batygin & Brown 2016

                  by Ono

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                  あなたの知らない宇宙 〜宇宙膨張の秘密〜
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                    このコーナーでは「あなたの知らない宇宙」と題して天文学の少し専門的な知識を噛み砕いて紹介していきます。
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                    「宇宙最大のなぞ!?宇宙膨張の秘密とは?」

                    ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

                    1929年エドウィン・ハッブルは宇宙が膨張していることを発見しました。

                    こうやって過ごしている間にも宇宙は膨張しているわけですが、逆に言えば過去に遡っていけば、宇宙は今よりもずっと小さかったことになります。そして、宇宙には極端な高温高密度状態の始まりが存在し、膨張して現在の宇宙になったという考え方(ビッグバン理論)が生まれるのです。今では、この考え方は観測事実によって最も有力な考え方となっています。



                    ところで、宇宙の膨張に関して、驚愕の観測事実がもう一つあるのです。

                    距離が遠い銀河ほど遠ざかる速度が速いのです。つまり、宇宙が今現在「加速」膨張しているということです。実は、宇宙が加速しながら膨張しているというのはとっても不思議なことなのです。



                    例えば、「物質のない空っぽの宇宙」だとしたら、宇宙はどのように膨張するでしょうか?そのような宇宙の場合は、膨らむ速さが一定のまま膨張するでしょう。では、「物質のある宇宙」ではどのように膨張するでしょうか?物質のある宇宙では、物質の重力に引っ張られて、速さはだんだん遅くなっていき、やがて宇宙の膨張は終わることになるでしょう。


                    このように考えるならば、私たちが住んでいる「物質のある宇宙」では膨張速度が減速していくはずです。しかし、観測は宇宙膨張がどんどん速くなっていることを示しています。わかりやすい例えとして、リンゴを投げ上げることを想像してみてください。もし、あなたが今リンゴを上に投げたら、きっと地球の重力に引っ張られて、下に落ちてくるでしょう。宇宙が加速膨張しているというのは、このリンゴが下に落ちてこないで、どんどん上に突き進んでいくことを意味しています。ありえないですよね?でも、そんなありえないことが実際の宇宙では起こっているということです。


                    宇宙では、物質の重力に反発するような「負の圧力」がどうやらはたらいていて、その力が宇宙を加速膨張させていると考えられています。ただし、どのようにしてそんな力がはたらいているのかは全くわかっていません。これは、天文学・物理学最大の難問とまで言われています。



                    宇宙を加速膨張させる正体不明のエネルギー。”暗黒エネルギー”と名付けられたこの正体不明のエネルギーは、宇宙の組成の実に72%を占めると考えられています。私たちは、ようやく「宇宙というのはよくわからないということがわかった」段階に来ただけなのかもしれませんね…。


                    by Hayakawa


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                    あなたの知らない宇宙 〜知ってる?X線天文学〜
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                      はじめにX線について簡単に説明します。可視光や電波は波長(単位:m)で表すことが多いですが、X線は一般的にエネルギーで表され(E=hνより)、単位はkeV(キロエレクトロンボルト)がよく使われます。温度に換算すると1keV=1千万度ほどとなります。とても高温ですね!また、10keV以下を軟X線、10keV以上を硬X線と呼びます。X線天文学ではこのような電磁波を用いて観測をします。


                      X線天体は高エネルギーの電磁波を放出できる環境を伴います。たとえば、1000万〜1億度の高温天体(恒星コロナ、天の川、超新星残骸、銀河団)や強重力天体(ブラックホール、中性子星、白色矮星)などです。あまり聞きなれない天体もあるかもしれません。しかし、宇宙で観測可能な物質の90%は高温のプラズマ状態であり、宇宙はX線天体だらけなのです!!このことからX線観測の重要性がわかると思います。



                      しかし、問題もあります。上の図は縦軸が高度(気圧)、横軸が波長で示されています。黄色の領域がX線で、X線のほとんどが地球の大気に吸収され、地表までたどり着かないことがわかります。地上での観測は難しいのです。そのため、X線領域では主に衛星による観測が行われています。これまで日本のX線望遠鏡は5機運用されてきましたが、2015年度に次期X線天文衛星ASTRO-Hが打ち上げられる予定です。

                      ASTRO-Hの科学的な目的は
                      ・宇宙の大規模構造と、その進化の解明
                      ・遠方(過去)の巨大ブラックホールの進化と銀河形成に果たす役割の解明
                      ・ブラックホール周りの時空構造の解明
                      ・粒子の加速メカニズムの解明
                      ・ダークマター、ダークエネルギーの解明
                      などです。

                      打ち上げの成功を祈りましょう!

                      【参考文献】
                      JAXA ASTRO-H計画とその目指すサイエンス

                      by Seki


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